V 具体的な取り組み
1 総合的な学習の時間と道徳・特別活動
(1) 総合的な学習の時間
 @ 重点目標
 生徒が主体的・意欲的に取り組み,その成果を表現・発表する「総合的な学習の時間」を展開する
 
 A 学習内容
前期(平和・人権について考えよう)
・1年生 岡山平和学習
・2年生 ヒロシマ平和学習
・3年生 オキナワ平和学習
 
 
後期(自分さがしをしよう)
 全校を縦割り班に編成し,村内の事業所で3日間の職場体験(「メルヘンの里 チャレンジワーク」)を行う。
 
 
通年(地域とふれあおう)
・村の諸行事への参加(桜祭り・あじわい祭りなど)
・ふれあいの花作り学習(独居老人への配布・あじわい祭りへの出展など)
・お年寄りとの交流(ゲートボール大会,ふれあいの年賀状など)
 
 
 B 地域に根ざした展開
・学校での教育活動について参加要請を積極的に行うことで理解・啓発を図り,特色ある学校づくりに向けて協力がえられるように努める。
・「村民一家族」のスローガンのもと,家庭や地域社会が一体となって連携を深める。
(2) 道徳教育
 @ 重点目標
・望ましい生活習慣を身につけ,時と場所に応じた適切な言動のとれる生徒の育成
・自分で考え判断し,主体的に最後までやり遂げる生徒の育成
・自己の役割と責任を自覚し,集団の向上に努める生徒の育成
・感謝と思いやりの心をもち,地域・社会に進んで奉仕する生徒の育成
 A 総合的な学習との関連
 様々な事象に向き合い体験的な学習・問題解決的な学習によって,高い価値に向かって行動し,自己実現に結びつけ,人間としてのあり方や生き方の自覚という視点から道徳的価値観の自覚を図る。
 B 地域社会や家庭との連携
・地域で行われる諸行事に進んで参加し,地域との交流を深める。
・学校での教育活動及び道徳教育について理解啓発を図り,協力がえられるように努める。
・家庭や地域社会が一体となって連携を深め,思いやりの心を育てる。
 
(3) 特別活動
 @ 重点目標
・落ち着きがあり,かつ,活気がある集団の育成に努める。
・体験を取り入れた学習活動を通して,思いやりの心を育てる。
・ボランティア活動を通して,思いやりの心を育てる。
・職場体験学習などを通して,ふるさとについての学習を進め,これからの郷土のあり方について考えさせる。
 A 総合的な学習との関連
・自ら課題を見つけ,自ら考え,主体的に問題を解決しようとする態度を養う。
・地域社会を見つめる中で,その一員である自覚を高め,貢献しようとする態度を育てる。
 B 地域社会や家庭との連携
・地域の中でいろいろな体験をすることや,異年齢や異世代の様々な人と関わることで,他への思いやりや責任を果たすことの大切さに気づかせる。
・地域の専門的な知識をもった方の協力をお願いすることで,授業の質を高めるとともに,誇りを持って生きている社会人に接することで,望ましい職業感の育成に役立てる。
・地域の中で活動することを通して,豊かな自然に感動するなど地域の良さを発見し,地域や自分に自信をもつことができるようにする。
・地域や家庭に情報を発信することなどにより,学校に対する理解を深め,連携して子どもたちの成長を見守る体制をつくっていく。
 
2 ふれあいの花作り
(1) はじめに 
 本校では,15年前から勤労生産学習で「菊作り」がスタートし,現在も総合的な学習の時間で受け継ぎ,学校の特色ある取り組みとなっている。生徒・教職員が一体となり,地域にも呼びかけ,「菊作り」を行うことで,地域との連帯感を強め,地域に支えられ助けられていることを再確認できている。
 
(2) 実践内容
@ 指導体制
 「菊作り」は,表(資料5)のような計画のもと,地域の先生である坂本博俊氏に年間を通して教えを請いながら実施してきた。「菊作り」は表(資料5)のように細かな作業がたくさんあるため,すべてを生徒とともに行うというのは困難であり,生徒が理解できていない作業もある。
 
A 評価
 作業の様子を観察したり,生徒と一緒に作業をしたりすることで「問題解決の能力」「学び方,ものの考え方」を評価し,各作業の終了時,学習したことの感想を書かせることにより,「自己の生き方」について評価をしている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  B 菊作りの実施

















 
時 期 作    業    内    容
 5月


 
さし芽作業を2時間程度実施し,菊作業がいよいよスタートである。昨年大輪を咲かせた鉢から新芽が吹き出し,それをカミソリで丁寧に切り取り,500本ほどさし床に挿し,発根を待つのである。その後,移植時に必要な肥料作りを職員の手で行った。
 6月
 
職員作業で土作りを行い,根を張り始めた苗を小鉢へ移植し,花を咲かせるための第2段階に移行していく。
 7月
 
厚物,管物の2種類に分け,大鉢へ移植し,下旬には「三枝誘引」を行い,菊作り後半へさしかかる。
 8月


 
支柱立てを行い,成長急進期の菊の茎をサポートする。また,わき芽摘みの繊細な作業も入ってくるため,生徒・職員が休憩時間や放課後に丁寧に協力して作業をした。
また,福助の移植はこの頃である。
10月
 
いよいよ輪台付けである。それぞれの花をいかに見栄え良くしていくかが重要になってくる。
11月

 
こうして5ヶ月余りかけて大輪を咲かせた菊の鉢を役場・駐在所・小学校などの公共施設や独居老人宅へ配り,日頃の感謝の気持ちを表している。
 
C 地域の先生
 この菊作りへは,10年前から地域の菊作りの指導者である坂本氏にご指導をお願いしており,年間の作業行程のうち重要なポイントの指導にあたってくださっている。丁寧でわかりやすい指導で,生徒も意欲的に作業に取り組むことができている。
 
D 地域の方の参加
 村内の告知放送で菊作業への参加者の募集を行い,2・3名ながら興味を持って地域の高齢者が参加して菊作りに挑戦し,今年は「あじわい祭り」の日に自宅前に数鉢の菊を並べた方もおられる。
 
(3)成果と課題
@ 生徒の感想から
 挿し芽をした苗から長いしっかりとした根が表れたことや裂けた茎をセロテープで補修しただけで見事に再生したことなどに菊の生命力に大きな驚きを感じている。また,休日も含めて毎日分担して水やりやわき芽つみなどの細かい作業を続け,やがて大輪の花の勇姿に責任感や達成感を感じている。
 そして,15年以上続いている菊作りに「育てる楽しみ」を見つけ,「菊配り」に喜びを感じ,よき伝統を後輩へ伝えていきたいと強く願っている。
 
A 作業の内容
 生徒が行っている作業には,病虫害の消毒や肥料作りなどは入っていない。生徒の作業に入れるか否かは十分検討しなければならないが,肥料作りに関しては生徒に体験させてもよいと思われる作業である。
 地域の先生の坂本氏も「真面目に取り組んでいるが,もっと積極性が欲しい。」と言われる。確かに一度の説明だけで理解して正確な作業ができていたのが,最近は二度三度と説明しなければならない程になっているので指導の仕方を検討する必要がある。
 
B 地域とのふれあい
 「菊配り」や「菊の展示」は村に守り育てられていることに感謝の意を表す大切な地域とのふれあいの行事である。地域の人に喜んでもらう,菊作りを大切な学習に位置づけ,続けていきたい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
3 職場体験学習(メルヘンの里 チャレンジワーク)
(1) はじめに
本校では,平成15年度より職場体験学習を総合的な学習に位置づけ,全学年で取り組むこととし,本年度で6年目をむかえる。他の地域では第2学年の取り組みとして位置づけられている場合が多いが,本校では,小規模校の特徴を生かし,異年齢の中での育ちあいを期待した縦割り班で,全校生徒の取り組みとしている。生徒は中学校生活の各学年で,職業について考え,選択し,自分の適性を考える体験を計3回することになる。経験を重ねるごとに,自己理解と進路に対する考えを深めているように思われる。
本年度,受け入れ先事業所は15ヶ所であり,快く引き受けていただいている。新庄村では「新庄っ子『宝』憲章」を制定し,村をあげて子ども達を育もうとする気風があり,地域の印象を「温かい」という言葉で表現している生徒もいる。そのような環境での職場体験は,生徒にとって職業との好ましい出会いとなり,さらに地元の産業を知る良い機会となると考える。
 
(2) 実践内容
@ 指導体制
職場体験学習は,全職員で指導にあたる。前年度までの事業所アンケートをもとに,担当者が受け入れのお願いをするために事業所を訪問し,夏季休業中に事業所を決定した。その後,事業所の担当者を招いて,職場体験学習の説明と教職員との打ち合わせのための懇談会を実施した。
15の事業所を4グループ(各グループ8〜9人)に分け,教員2名で指導にあたった。各事業所の受け入れ人数は,事業所の都合もあり,1〜3名であり,できるだけ異年齢の構成とした。指導に用いる資料は事前に冊子として職員に配布し,各グループ担当者の裁量で進み具合を調整できるようにした。
 
 A 評価
総合的な学習の時間に身につけさせたい力を「問題解決の能力」「学び方・ものの考え方」「自己の生き方」の3つの観点に分けてとらえ指導している。各時間ごとの目標を設定し,その時間ごとに生徒が振り返りをし,記録できるようにポートフォリオの手法を取り,記録したものを提出し,教員が確認し,返却後,生徒がファイルして取り組み全体の振り返りができるようにしている。
 
 B 事業所の決定
職場体験先事業所の決定にあたっては,3年間で3つの異なる職種となるように考えながら,本人の希望を優先して決定している。その際,第3希望までを調査し,上級生がリードできるように異年齢の者同士の組み合わせとした。上級生が昨年までの経験をもとに下級生への指導をすることで,より主体的に取り組むことを目指している。
 C 事前学習
事業所や職業についての調査は,昨年までの調査や職場体験を記録し事業所ごとに保存している資料(ファイル)を使用した。具体的に事業所で体験できる内容や,事業所の特色が分かり,職場体験を具体的にイメージすることができ,生徒が主体的・積極的に取り組め,時間を有効に活用できた。内容によっては,3年生が1・2年生に指導する場面も設定した。
 
 D 職場体験の実施
生徒は直接事業所に出勤する。活動終了後は直接帰宅し,学校に生徒の代表が終了の報告をすることにしている。体験活動実施中は,教員が分担の各事業所を訪問し,記録の写真を撮らせていただいた。加えて,学校長と職場体験担当職員で,全事業所の訪問を行い,生徒たちの活動状況を把握し,来年度の受け入れの要請を行った。
 
 E 活動のまとめ
職場体験を通して学んだことを各自でまとめ,お礼の手紙を書き,自分で事業所に持って行った。活動のまとめとして,本年度は発表会をもつことになっているが,発表会をもつ形式とまとめの冊子を作る形式を隔年で行うこととしている。例年は全校生徒が事業所ごとにプロジェクター(パワーポイント),掲示物(壁新聞),寸劇などの形式で発表しているが,本年度は研究会を控えており,職場体験学習の発表のみに多くの時間を割くことができにくいため,学習発表会の中に発表の場を持ち,生徒の代表による発表とした。さらにへき地教育研究会で,その内容を紹介することとした。
 
(3) 成果と課題
 @ 全校参加の職場体験(3年間で3回:9日間)
 3年間で3回実施することは,生徒にとって得るものが多く,特に体験を重ねることによる成長は他の活動にかえがたいものである。しかし,実施時期が10月の上旬であり,1〜2年生にとっては真庭支部総体と県総体美作予選会の間であり,3年生にとっては高校進学に向けて学習に集中する時期である。そのため,教員の打ち合わせや準備などに,見通しを持った取り組みが必要である。そこで,効率よく話し合いや作業を進め,部活動や学習時間が確保できるように努めた。本年度は,学習発表会(11/8),共に生きる子ども育成プロジェクト「子ども体験発表会」(11/11),へき地教育研究会(11/28)があり,まさに綱渡り的なタイムスケジュールとなった。今後も効率的な取り組みを研究する必要がある。
 
A 事業所と教員との打ち合わせ
 事業所と教員との打ち合わせのために懇談会を開き,事業所の方に集まっていただき,職場体験の趣旨を説明し,意見交換をしている。懇談会後には,事業所の方と担当教員(各グループ2名)との打ち合わせ会を持っている。懇談会欠席の事業所には担当教員が直接出向いて,事業所の担当者との打ち合わせをしている。今後も,より有意義な職場体験学習となるよう意義を理解していただき,共通理解を図る場として,懇談会を活発なものにしていく必要がある。
 
B 活動のスリム化
 新教育課程に完全移行となる平成24年度に向けて,総合的な学習の時間に実施する内容と実施時間数の見直しが必要である。今年度は,お礼の手紙の書き方は国語科で指導するなど,時間数の削減には努めてきたが,今後は,時間数の検討と内容の焦点化・重点化が必要である。
 
C 他領域との関係
 昨年度の職員研修で,本校職員が職場体験を通して求める生徒像は「マナー・あいさつ・社会のルールを身につけた生徒」「進路について考えることのできる生徒」「地域の産業を知ることができる生徒」「働くことの喜びや意義を理解する生徒」「学んだことをまとめ,表現できる生徒」「他人や自分のよさに気づくことができる生徒」であることが明らかとなり,指導の中で重視している。これらの内容は,道徳や特別活動でも目標とされている内容である。本年度も,道徳や学級活動との関連を図った授業を実施している。今後,実践資料を保存し,職員で共有していくことや,新たな教材となる資料を収集することを怠らず,さらに職場体験の事前・事後に職場体験と道徳・特別活動(学級活動)のユニット化を計り,領域間の相乗的な効果や内容の深まりを期待していきたい。
 
 
4 成果と課題
(1) 求める生徒像を実現する活動の確認
 昨年度8月の研修では,岡山県総合教育センター指導主事の指導により,「求める生徒像」を実現していく場としてどのような活動があるかを確認できた。特に,「特別活動」,「道徳の時間」,「総合的な学習の時間」に焦点を絞り,それぞれの領域で指導すると効果的だと思われる内容を整理することができた。
 
(2) 体験学習と関連づけた学級活動,道徳の時間
 今までは,総合的な学習の時間,学級活動,道徳の時間の内容は,特に関連づけられていなかったので,せっかくの体験を生かしきれていなかった。昨年度,全体計画や年間計画を見直すなどして,道徳の時間や学級活動にふれあいの花作り学習や職場体験学習を関連づけて授業を行うことができた。
 道徳の時間では,職場での体験や菊作り体験を想起しながら,考えをより深めることができた。また,道徳の時間の学習が体験への積極的な参加につながった。1年生の学級活動では,職業調べをする際,身近な存在である両親や近所の方に尋ねてまとめるなど,書籍で調べるより実感をもって受け止めることができた。
 
(3) 地域の人材活用
 地域の方に講師として指導をしていただくふれあいの花作り学習では,新庄中学校卒業の先輩として,作業態度やあいさつについて指導をしていただく場面もあった。ともすると,外部講師の方には,専門的な内容の指導だけをお願いしがちであるが,人生の先輩として菊作りを通してマナーや作業に対する心構えについても指導していただくよう依頼した。また,昨年度から,中学生と一緒に菊作り作業をすることを地域の方に呼びかけた。参加してくださったのは,2〜3名程度ではあったが,一緒に菊作り作業に取り組んでくださり,中学生にとってもよい刺激になった。
 
(4) 地域活動への積極的な参加
 生徒会のボランティア活動として,バス停の清掃作業や,がいせん桜祭りなどの地域活動への参加,老人の方との交流など,中学生全員がこれらの活動に参加している。休日に行われる盆踊り,秋祭り等の地域活動については,特に指導は行っていないが,積極的に参加している。
 今年度の新庄村合同運動会では,地域の人々に参加していただくフォークダンスを企画し,地域の人々も積極的に参加してくださった。
 地域活動への参加については,学級活動,道徳の時間との関連など,地域での活動がより有意義なものになるような取り組みを今後も探っていきたい。
 
(5)今後に向けて
 「地域との共生を考え,社会性のある心豊かな子どもの育成」を目指して取り組んできたが,先にも述べたとおり,子ども達の変化が目に見えるような成果は難しい。しかし,道徳や特別活動等と体験学習が相互に生かされる場面は確実に増えてきている。
 新しい学習指導要領が公示され,総合的な学習の時間や道徳・特別活動等については,来年度から新しい学習指導要領で実施することが求められている。総合的な学習の時間に関しては,授業時数の削減にともない,学習内容の精選や他教科との関連を明確にする必要がある。また,道徳についても,道徳の時間で学習したことが様々な活動に生かせるための,他教科との関連表を作成する必要がある。いずれにしても,すべての教育活動で生徒を活動の中心にすえて,引き続き学校教育目標の実現に向けて取り組んでいきたい。